糖尿病
糖尿病は、血液中を流れる糖分(血糖値)が正常な範囲を超えて高い状態が続いてしまう病気です。健康診断で「血糖値やHbA1c(ヘモグロビンA1c)が高い」と指摘されても、初期段階では自覚症状がほとんどないため、つい放置してしまう方が少なくありません。 しかし、高血糖の状態が続くと全身の血管が少しずつダメージを受け、視力低下(網膜症)、透析が必要になる腎機能低下(腎症)、手足のしびれ(神経障害)といった深刻な合併症を引き起こすリスクが高まります。
寺師医院では、「糖尿病だからこれを食べてはいけない」と厳しい制限を求めるのではなく、「どうすれば美味しく食べながら、無理なく数値をコントロールできるか」を患者さんと一緒に考えるパートナーでありたいと願っています。健診で異常を指摘された方、喉の渇きや疲れやすさなど気になる症状がある方は、どうぞお気軽に当院へご相談ください。
糖尿病の症状について
糖尿病は「サイレント・キラー」と呼ばれるほど、初期には自分自身で気づくことが難しい疾患です。しかし、血糖値がかなり高い状態になると、体はさまざまなサインを出し始めます。臨床の現場でよく見られる代表的な症状は以下の通りです。
- 喉が異常に乾き、水分をたくさん飲む(口渇・多飲)
- 尿の回数や量が増える(多尿)
- 急激に体重が減少する
- 全身に倦怠感があり、疲れやすくなる
- 傷が治りにくくなる
これらの症状が現れている場合、血糖値がかなり上昇している可能性があります。また、高血糖の状態が長く続くと、血管へのダメージが蓄積し、合併症による症状が出現することもあります。
合併症による具体的な症状
糖尿病の進行によって引き起こされる合併症は、日常生活の質に大きな影響を及ぼします。特に注意が必要な症状として、以下のものが挙げられます。
手足のしびれや感覚の麻痺
糖尿病性神経障害と呼ばれるもので、足の先がピリピリとしびれたり、痛みを感じにくくなったりします。感覚が鈍くなることで、足のケガに気づかず、壊疽(組織が腐ってしまう状態)に至るリスクがあるため非常に注意が必要です。
視力の低下や目がかすむ
糖尿病網膜症は、眼底の血管がダメージを受けることで起こります。悪化すると失明の原因にもなるため、眼科との連携が不可欠です。少しでも「目のかすみ」を感じる場合は、早めの受診をお勧めします。
むくみや尿の異常
糖尿病腎症が進行すると、体内の老廃物を尿として排出する機能が低下します。足のむくみや、尿にタンパクが混ざるなどの変化が見られ、最終的には人工透析が必要になるケースもあります。
歯茎の腫れや出血、歯のぐらつき(歯周病の悪化)
糖尿病と歯周病は非常に密接な関係にあり、歯周病は「糖尿病の第6の合併症」とも呼ばれています。高血糖で免疫力が落ちると歯周病が悪化しやすくなるだけでなく、歯茎の炎症そのものがインスリンの働きを妨げ、さらに血糖値を上げてしまうという「負の悪循環」に陥ります。逆に言えば、歯周病を治療することで血糖値(HbA1c)が改善することも分かっています。当院では全身の健康を守るため、かかりつけ歯科医院での定期的な検診や、歯科との積極的な連携をお勧めしています。
糖尿病の原因について
糖尿病の原因は、一言で言えば「インスリンの作用不足」です。インスリンは、血液中の糖を細胞に取り込ませる役割を担っていますが、これがうまく機能しなくなる原因にはいくつかのパターンがあります。
生活習慣の影響
日本人の糖尿病の多くを占める2型糖尿病では、日々の生活習慣が大きく関与しています。特に以下のような要因が積み重なることで、発症のリスクが高まります。
- 過食や高カロリーな食事の摂取
- 運動不足による肥満(特に内臓脂肪型肥満)
- 過度なストレスの蓄積
- 喫煙の習慣
これらが原因でインスリンの効きが悪くなる状態をインスリン抵抗性と呼びます。体がインスリンを分泌していても、細胞がそれに反応してくれないため、血糖値が下がりにくくなってしまうのです。
遺伝的な要因
ご家族に糖尿病の方がいらっしゃる場合、体質的に糖尿病になりやすい傾向があると考えられています。これは「糖尿病そのものが遺伝する」というよりは、インスリンが出にくい体質や、太りやすい体質などが受け継がれることを意味します。そのため、遺伝的素因がある方は、より一層生活習慣に気をつけることで発症を予防することが可能です。
その他の要因
加齢に伴ってインスリンの分泌能力は徐々に低下していくため、高齢になるほど糖尿病の発症率は高まります。また、他の疾患の治療で使用する薬剤(ステロイドなど)の影響や、膵臓そのものの病気が原因で血糖値が上がることもあります。寺師医院では、これらの背景を丁寧に伺い、何が原因で血糖値が上がっているのかを慎重に見極めていきます。
糖尿病の病気の種類について
糖尿病はその成り立ちによって、大きくいくつかの種類に分類されます。それぞれのタイプによって、治療へのアプローチが異なります。
1型糖尿病
膵臓にあるインスリンを作る細胞(β細胞)が、自己免疫などの原因で壊されてしまい、インスリンがほとんど出なくなるタイプです。生活習慣とは関係なく、若年層から高齢者まで幅広く発症します。このタイプの方は、インスリン注射による補充が生命維持のために不可欠となります。
2型糖尿病
日本人の糖尿病患者さんの約9割以上がこのタイプです。遺伝的な体質に、食べ過ぎや運動不足などの生活習慣が加わって発症します。インスリンの出方が悪くなったり、効きが悪くなったりする状態です。初期であれば、食事や運動の改善だけで血糖値をコントロールできることも少なくありません。
その他の特定の機序による糖尿病
遺伝子の異常や、肝臓や膵臓の病気、内分泌疾患、あるいは特定の薬剤の使用が原因で起こる糖尿病です。原因となっている元の病気の治療や、薬剤の調整が必要になる場合があります。
糖尿病の治療法について
糖尿病治療の最終的な目的は、血糖値を下げることそのものではなく、合併症を予防して健康な人と変わらない生活を送ることにあります。当院では以下の3つの柱を中心に治療を組み立てていきます。
食事療法
治療の基本となるのが食事療法です。当院では「食べてはいけない」という制限よりも、「適切な量をバランスよく食べる」ことを重視しています。具体的には、摂取カロリーの適正化、食物繊維を先に食べるベジタブルファーストや、ゆっくり噛んで食べることなどが推奨されます。
運動療法
運動をすることで、血液中のブドウ糖が筋肉で消費され、血糖値が下がります。また、継続的な運動は筋肉量を増やし、インスリンの効きを良くする効果もあります。散歩や軽いジョギングなどの有酸素運動に加え、無理のない範囲での筋力トレーニングを組み合わせることが効果的です。膝や腰に痛みがある方は、プールでの水中ウォーキングやエアロバイクなど負担の少ない運動方法が推奨されます。
薬物療法
食事や運動だけでは管理が不十分な場合、お薬による治療を開始します。近年、糖尿病の治療薬は飛躍的に進化しており、患者さんの病態に合わせて選択できるようになりました。
- インスリンの分泌を促すお薬
- インスリンの効きを良くするお薬
- 尿から糖を排出させるお薬(SGLT2阻害薬)
- 腸管からの糖の吸収を遅らせるお薬
- GLP-1受容体作動薬(GLP-1とは、食事を摂ると小腸から分泌され、インスリンの分泌を促すホルモンのことです)
これらの中で特にSGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬は、単に血糖値を下げるだけでなく、心臓の働きを助けたり(心不全の予防)、腎臓の機能を守ったりする強力な効果が証明されており、最新のガイドラインでも高く推奨されています。患者さんのライフスタイルや合併症のリスクに合わせて、最適なお薬を選択します。また、低血糖のリスクを最小限に抑えながら、安全に治療を継続できるようサポートいたします。
糖尿病についてのよくある質問
Q1. 糖尿病は一度なったら一生治らないのですか?
A1. 糖尿病は残念ながら現代の医学では完治させることは難しいとされています。しかし、適切な治療や生活習慣の改善によって、血糖値を正常に近い範囲で維持する寛解の状態を目指すことは十分に可能です。血糖値が安定していれば、健康な人と変わらない寿命や生活の質を保つことができます。
Q2. 甘いものを食べ過ぎなければ糖尿病にはなりませんか?
A2. 甘いものの摂取だけが原因ではありません。ご飯やパンなどの炭水化物の摂り過ぎ、脂っこい食事、そして全体的なカロリーオーバーが関係します。また、痩せていても運動不足や筋肉量の低下によって発症する方もいらっしゃいます。バランスの良い食生活と適度な運動が予防の鍵となります。
Q3. 家族に糖尿病がいなければ安心ですか?
A3. 家族歴がない方でも、現代の便利な生活習慣(高カロリー食や運動不足)によって発症するリスクは誰にでもあります。特に40歳を過ぎるとリスクが高まるため、定期的な健康診断を受けることが大切です。
院長より
健康診断で「糖尿病の疑いがある」「要精密検査」という結果を見ると、多くの方が「もう好きなものが食べられない」「これからどうなってしまうのだろう」と大きな不安を感じられます。社会には「糖尿病=自己管理ができていない」という誤った偏見(スティグマ)がいまだに根強く、それが受診をためらわせる原因にもなっています。
しかし、当院では糖尿病という診断を、これまでの生活を見つめ直し、より健康的な毎日を手に入れるための「良いきっかけ」と前向きに捉えていただきたいと考えています。
当院では、数値だけを見て「もっと頑張って痩せましょう」「あれもこれも食べてはダメです」と強いるような診療はいたしません。仕事が忙しくて運動する時間がない、お付き合いで外食が多くなるなど、生活の中にはさまざまなご事情があるはずです。私たちは、そのようなリアルな生活背景に寄り添い、現実的で実行可能な「あなただけの解決策」を一緒に見つけることに力を注いでいます。
健診結果で気になることがあったり、お体に不調を感じていたりする場合は、一人で抱え込まずにお気軽にご相談ください。早めに対応するほど、生活習慣の見直しを中心とした治療の選択肢が広がります。どうぞお気軽に当院へお越しください。
